
土木工事
河川工事
近年の異常気象がもたらした大雨などにより、 各地で河川の氾濫が問題になっています。河川工事とは、水害の発生を防止するために堤防を設置したり、床止めといった土木工事を施工することです。ひとたび河川の氾濫が起きれば、その損害は計り知れません。人々の安全な暮らしを守るために欠かせない極めて重要な土木工事と言えるでしょう。おもな河川工事には以下のようなものがあります。
上流部での河川工事
近年の異常気象がもたらした大雨などにより、各地で河川の氾濫が問題になっています。河川工事とは、水害の発生を防止するために堤防を設置したり、床止めといった土木工事を施工することです。ひとたび河川の氾濫が起きれば、その損害は計り知れません。人々の安全な暮らしを守るために欠かせない極めて重要な土木工事と言えるでしょう。おもな河川工事には以下のようなものがあります。

砂防工事
砂防工事とは土砂災害を防ぐため、砂防法という法律を根拠として実施される土木工事のことです。河川周辺の集落や道路の保護を主な目的としています。安全だけではなく、地域の自然環境や歴史を保全することも重要です。たとえば、日本三景のひとつ宮島では、土石流によって荒廃した渓流を、巨石を庭園風に配置することによって史跡名勝と調和する砂防工事に成功しています。

地すべり防止工事
地すべり防止工事は大きく分けて、抑止工と抑制工の2種類があります。抑止工は何らかの構造物を設置して、構造物の力で地滑りを防ぐという土木工事です。ワイヤーで不安定な土塊を固定するアンカー工がよく知られています。一方の抑制工は斜面、地質、地下水等の自然条件を変化させ、地すべりを防ぐ方法です。人工的な縦穴を作ることで地下水の排出を促す集水井工などがあります。

砂防ダムの建設
砂防ダムとは、河川に設置される土砂災害防止のための設備の一種です。一般的なダムとは違って、土砂災害の防止に特化していることが特徴です。通水部がスリット状になっているスリットダムという型式のものが多く見られます。スリットダムは河川に生息している魚類などの行動を阻害しない、環境に優しいダムでもあります。
中流部・下流部での河川工事
日本のほぼすべての河川は中流部・下流部に河川工事が実施されています。諸外国と比較して治水と利水のための河川工事が進んでいるといっても良いでしょう。中流部・下流部での河川工事は、堤防の建設、川床止め、河道整正などの土木工事が行われます。

堤防の建設
豪雨などによる河川の氾濫を防止するために築造されるのが堤防です。洪水時に想定される水位を計画高水位といいますが、これを越えないように左右両岸に盛土を行う土木工事がメインになります。特殊な事情がある場合は、コンクリートや鉄の板が用いられることもあります。

床止め工事
川床の土質が流水に対して不安定だと、河川の形状も変化しやすくなり、氾濫を招きやすくなります。そのため、河川の形状を維持するためのコンクリートブロックなどが設置されることもあります。これを床止め、または床固めなど呼びますが、中流部・下流部で良く見られる土木工事のひとつです。

河道整正
屈曲している河川を滑らかな流れに変える土木工事を河道整正といいます。河川は蛇行している部分ほど洪水などが起きやすいものです。極端に蛇行している場合、新しく直線河道を開削することもあります。また、河川の流れを短縮して、洪水が起きる前に水の逃げ道を作るような土木工事もよく行 われています。
河川工事が秋以降に多い理由
河川工事は秋以降に施工されることがほとんどです。春から秋にかけては梅雨、台風などで雨量が多く、河川に大量の水が流れ込むことも少なくありません。このようなタイミングで河川工事をしていると、かえって水害をひどくしてしまうおそれがあります。そのため、河川工事は台風シーズンも落ち着いた秋以降の渇水期に行われるのです。
河川工事の今後の課題
洪水は豪雨が引き金で起こりますが、じつは原因はそれだけではありません。雨は地表に染み込んだり、地面を枝分かれしながら、最も低い場所に集まって来た分が川の流れになるのです。河川のまわりの森林が宅地開発され、雨のほとんどが短期的に川に流れ込むことも、氾濫を招く一因です。今後の河川工事としては、河川の形状だけで はなく、周囲の土地開発なども合わせて考えていく必要があるとされています。
トンネル工事
山がちな国土の日本では、インフラ整備のための土木工事でトンネル工事が必要となることはめずらしくありません。そのため、これまで数多くのトンネルが造成され、世界に誇る土木技術が磨かれてきました。代表的なトンネル工事工法としては次のようなものがあります。
山岳工法

山の下をくぐる多くのトンネルはこの方法によって作られています。機械や人力で掘削するので、土中の 障害物や地質の変化などに柔軟に対応できることが特徴です。山岳工法の中でも代表的なNATM(ナトム)工法の手順は以下の通りです。
削孔(さっこう)
ジャンボという機械で穴を掘り、ダイナマイトを入れます。1度に2~3個の穴が掘られることが一般的です。トンネルを造成しようとしている場所の状態によって、穴を掘る場所、ダイナマイトの数などを調整します。
装薬(そうやく)
穴の中にダイナマイトを入れていきます。かつては人力によって行われていましたが、危険を伴う作業でした。そのため、最近では遠方から機械を操作してダイナマイトを充填する方法も開発されています。
爆破
ダイナマイトを爆 発させて岩盤を砕きます。この時、一度にすべてを爆発させるのではなく、トンネルの内側になる部分から順番に爆発させますが、これは岩をより簡単に崩すためです。
ズリ処理
爆砕によってできた小さな岩をズリと呼びますが、これを外に運び出す作業をズリ処理といいます。トラクターショベルでかき出してダンプトラックで運び出す方法が主流です。ベルトコンベアー、トロッコなどが使われることもあります。
支保工(しほこう)設置
ダイナマイト爆破によってできたトンネルの原型が崩れないように、支保工を設置します。支保工とは鋼鉄製の支えのことです。複数の 支保工をボルトで接合しますが、支保工の種類、設置間隔などは山の状態によって違ってきます。
コンクリート吹付け
掘ったトンネルの壁を強化するために、コンクリートを5~15cmの厚さに吹き付けます。コンクリートミキサー車でコンクリートをトンネル内に運び込み、吹付け機を使って吹き付けます。
ロックボルト設置
吹付けが完了したら、3~4m程度のロックボルトという鉄の釘を山に突き刺します。トンネルは削孔からロックボルト設置までの作業を繰り返しながら掘り進められますが、1回の作業で1~1.5mほどしか進めません。1kmあたり700~1000回もの作業が必要なのです。
防水工とコンクリート覆工(ふっこう)
一通りトンネルを彫り終わった後、トンネル内への漏水を防ぐためにビニール性の防水シートが貼られます。さらにその上からセントルという半円形の型枠でコンクリートの壁を作っていきます。最後の仕上げとして、壁をきれいにしたり、電灯、換気設備、防災設備を設置してトンネルの完成です。
シールド工法

シールドマシンという筒状の機械で土をゆっくりと掘り進める工法です。シールドマシンには、掘ったところから崩れていかないようにさまざまな工夫が凝らされています。比較的新しい工法ですが、高い安全性が評価されていることが特徴です。
土を削る
削られた岩盤は、シールドマシン内部にあるスクリューコンベアに乗せられます。やがて後方のベルトコンベアまで運ばれ、トンネルの外へと排出されるのです。
土を運び出す
削られた岩盤は、シールドマシン内部にあるスクリューコンベアに乗せられます。やがて後方のベルトコンベアまで運ばれ、トンネルの外へと排出されるのです。
トンネルの壁を組み立てる
シールドマシンは岩盤を掘りながら、同時にトンネルの壁を組み立てていく機能を持っています。シールドマシンが前進した後に、分割された部品を組み立てて壁を形成していきます。これらの「土を掘る」「土を運び出す」「トンネルの壁を組み立てる」という作業を少しずつ繰り返しながら、トンネルが完成していくのです。トンネルを掘り終えたところで、シールドマシンは解体されて外に出されます。
舗装と仕上げ
最後に床面をコンクリートで舗装します。仕上げに換気設備、照明設備などを作ってトンネルの完成です。
山岳工法とシールド工法のメリット・デメリット
山岳工法は少人数で施工できることや、急に固い地盤が出現した時などに臨機応変に対応できるのがメリットです。しかし、大がかりな設備が必要な点、事前に地質に関する綿密な調査が必要な点に注意が必要です。一方、シールドマシン工法は、崩れやすい地盤でもすぐに壁を作ることで、トンネル工事を可能にしました。ただし、シールドマシンは非常に高価であるにもかかわらず、工事終了後に解体処分され再利用できないところがデメリットともいえます。それぞれの土木工事の現場、予算などによってふさわしい工法を選択するようにしたいところです。
橋梁工事
河川や谷間をまたいで街をつなぐ橋は、インフラ基盤としてなくてはならないものです。安全性はもちろんのこと、地域の景観と調和する構造物が求められることが特徴といえるでしょう。橋梁工事は下部工工事と上部工工事という2つの土木工事によって構成されています。
下部工工事

橋の土台を作る土木工事のことを下部工工事といいます。地中で橋を支える基礎となる部分を作り、橋脚(きょうきゃく)を設置します。河川に架ける場合は川の流れに対して強靭であるだけではなく、流れを阻害することのないように設計しなければいけません。下部工工事の手順は以下の通りです。
掘削
ケーシングと呼ばれる鉄のパイプを使い、パイプの内側を掘削機械で掘りながら土の中に押し込んでいきます。ケーシングを使うことで垂直に深く正しく掘削することが可能です。
鉄筋建込み
掘削した穴の中に、鉄筋のカゴでできた杭を埋め込んでいきます。この作業を建込みと呼びますが、橋脚を支える重要な部分なので、変型等しないよう細心の注意が必要です。
コンクリート流し込み
杭の底の部分からコンクリートを流し込んでいきます。コンクリートが高い位置から落下して分離しないようにトレミー管と呼ばれる機材が使用されます。
仮締切
橋脚に必要な本数の杭を設置したら、周囲に鉄矢板を埋め込み仮締切を行います。さらに、橋脚を設置するのに必要な深さまで穴を掘ります。
杭頭処理とフーチング
杭頭を所定の高さまで削ります。その後、その上にフーチングと呼ばれる土台部分を設置します。フーチングの後に壁を施工し、橋を支える下部工の完成です。
上部工工事
橋梁の支承から上の部分を作る土木工事を上部工工事といいます。支承とは土台と橋をつないでいる部分ですが、一般的に完全に固定せずある程度の余裕を持たせています。これは、強風や台風などによるたわみを吸収するためです。上部工工事には以下のような工程があります。
橋桁架設
橋桁とは橋脚の上に架け渡し、橋板を支える部分のことです。まず、ゴム製などの支承を橋脚の上に設置し、その上にいくつかのブロックに分けた橋桁をひとつにつなげていきます。
床版(しょうばん)・橋梁付属物
床版とは、橋の上を通過する車などの重みを橋桁、橋脚に伝える床板のことです。一般的に橋桁に上手く力が伝わるように凸凹した木の板が使われます。木の板を貼ったらその上からコンクリートを流し込み、シートなどを被せて養生(ようじょう)し、十分な強度のある道路を作ります。そして、床版の壁面に落下防止用の壁などの付属物の取り付けです。
塗装と設備
人や車が通るための橋ならば舗装、電車のための橋ならば線路を架設して、照明や標識を設置します。このようにして、人や車や電車が問題なく利用できるようになれば、橋梁工事の完成です。
橋のさまざまなデザイン
下部工工事と上部工工事によって造成される橋ですが、大型構造物であり必然的に多くの人が目にするものです。そのため、周囲の景観と調和するよう注意が必要です。適切なデザインを採用し、地域のランドマークとなっている橋も少なくありません。代表的な橋のデザインには次のようなものがあります。

アーチ橋
アーチのような橋脚で支えられている橋です。コンクリートの強度を活かせるデザインでもあり、古くからたくさんのアーチ橋が作られてきました。

斜張橋
塔の先端から斜めに張ったケーブルで橋桁を吊ります。強度に優れているので、長い橋を作ることができるのが特徴です。

吊り橋
支柱間をケーブルでつなぎ、さらにそこからロープを下ろして床版を吊った橋です。近年、ケーブル鋼材の進化が著しく、瀬戸内海の小島をつなぐ長い橋にも使われています。
土地造成工事
土地造成工事は生活基盤を支える重要な土木工事です。住宅地、市街地、研究学園都市、工業団地、レジャー施設、交通施設、処分場などすべて土地造成工事があってこそ形成できるといっても過言ではありません。多様な分野と関連していることもあり、さまざまな知識と技術を必要としていることも特徴です。土地造成工事に必要な専門知識や土木技術について解説します。
測量技術

土地造成工事をするにあたっては、まず工事前の土地の状態を正しく把握することが不可欠で す。さらに、工事によってどう土地が変化していくのか、工事終了まで予測し管理し続けなければいけません。こういったことに必要な技術が測量です。測量には次のようなものがあります。
基準点測量
ある基準点から距離を測定する方法です。三角点を基準として幾何学的な方法で二点以上の距離を算出する三角測量がおもに用いられます。
GPS測量
GPSを使って位置、高さなどを求めます。基準点、測点にGPS観測機を設置して、GPS衛星から発信される電波を受信することによって測量する方法です。
用地測量
土地や境界線について詳しく調査します。用地取得などに必要な資料、画面などを作成します。とくに住宅地の土地造成工事では欠かせません。
国土調査測量
国土調査法に基づき、土地の正しい位置、形状、地番、面 積などを明らかにします。その結果を元に地籍図、地籍簿を作成する、土地についての戸籍調査ともいえる測量です。
空中写真測量
ドローン、航空機、人工衛星などで撮影された空中写真を使い、地形図の作成などの各種調査を行います。とくに、低価格化が進んでいるドローンが使用される機会が増えています。
地盤改良・土壌改良

もともと地盤がしっかりしていれば、すぐその上に土を盛って建物を建てても問題ないでしょう。しかし、粘土質の柔らかい土地、水を多く含む砂などの土地は、地盤改良や土壌改良が必要になります。
地盤改良
粘土質の柔らかい土地に重い物を建てると沈んでしまいます。そのままでは建物を建てることも土を盛ることもできません。また、水を多く含む砂地は地震が発生すると流動化してしまいます。このような土地はまず、固化材などを注入したり、排水用の杭を利用して地盤内の水を排出するなどの地盤改良が必要です。
土壌改良
排水性が悪い地盤を排水性に優れた土と丸ごと置き換えるのが土壌改良です。緑化が必要な土地を植物の生育に適する土に取り替えたり、肥料を投入することもあります。
緑化

土地造成工事に欠かせない技術です。住宅地も緑化の仕上げがあって、初めて快適な住環境が整うといっても過言ではありません。他の土地にあった植生環境を、新しい場所にそのまま移植することもあります。緑化は植物に関する深い知識が必要です。その地域の在来植生、環境などに合った種を正しく選択することが求められます。
土地造成工事の4つの手順
土地造成工事にはいろいろなパターンがあります。まず古い住宅を解体したり、山林を切り開いたり、傾斜した土地を平らにしなければいけないこともあります。いずれにせよ、以下の4つの手順を踏むことが多いようです。
粗仕上げ
住宅の解体後に出るコンクリートガラ、伐採した木くずなどを重機で取り除きます。重機でならしたり、押しつぶすこともあります。
砂利造成
細かいガラ、石などを取り取り除き、土地の高さを修正します。その後に防犯対策にもなる砂利が敷かれることもあります。花崗岩が風化した真砂土、玉砂利、化粧砂利などが用いられます。
防草仕上げ
土地造成後の雑草を抑制するために、防草シートを貼ります。事前処理として、雑草は根元からきれいに抜いておくことがポイントとなります。
コンクリート・アスファルト舗装
土地造成工事後に駐車場などにする場合、砂利舗装だけではなくコンクリートやアスファルトで舗装することもあります。土地の高さをしっかりと計測し水平になるようにコンクリートまたはアスファルトで舗装する技術が必要です。
下水道埋没工事
下水道管は人々の暮らしを支えるなくてはならないものです。下水道管の埋没状況は下水道台帳に記され下水道局で管理されています。下水管埋没工事にあたっては、綿密な事前調査が必要です。また、下水道管埋没工事の方法には開削工法、推進工法、シールド工法などの工法がありますが、いずれも大規模な土木工事となります。
下水管埋没工事のための準備
下水道管埋没工事は少なくない民家に影響を与える可能性のある土木工事です。そのため、本格的な工事がスタートする前には必ず綿密な事前調査が行われます。事前調査の流れは以下の通りです。
家屋調査
下水道管埋没工事は家屋や塀に影響を及ぼす可能性があります。問題が発生すると考えられるエリアを特定し、壁の隙間などを調べる家屋調査は工事を施工する前に必要です。
試験掘
家屋調査の後、マンホールを造成する場所で試験掘を実施します。試験掘とは、すでに配置されている水道管などの位置を確認するため、試験的に道路を掘って確認する作業のことです。